食品は安全であることが基本です。過去に発生した病原性大腸菌O-157による集団食中毒やBSEなど、食品の安全を脅かす事故・事件の経験から、現在、食品の安全性を確保するためには、農場、食品工場、流通そして消費者の食卓まで、一貫した衛生管理が必要との考えのもと、それぞれの段階で取組が行われています。農場HACCP(ハサップ)は、農場での生産工程をしっかり管理することで、食品となる畜産物の安全性を、確保する、有効なシステムです。
まず、農場HACCPの基となっているHACCPについて。
HACCPとは、食品の安全管理のための手法で、1960年代米国のNASAがアポロ計画のなかで発案したのが始まりです。宇宙に行ってから食中毒になったり、食品が変質して食べるものが足りなくなっては大変ですから、確実に安全な食品を作る必要があったのです。今では国際的に認められ、食品製造の分野では世界中で取り入れられています。
HACCPは、Hazard(危害) Analysis(分析) Critical(重要) Control(管理) Point(点)の頭文字をとったものです。原材料や資材、また食品製造の全工程で、どこにどのような危害があるのか、それはどんな管理をすれば避けることができるのかを判断し、文書化し、実行して記録を残すことにより、安全性を保証する衛生管理のシステムです。
例えば、食品工場で肉の加工品を製造するとき、原材料の生肉には細菌(危害)が付いている可能性があります。一方、細菌は一定以上の温度で一定時間加熱すれば確実に死滅することがわかっています。そこで、加熱の工程を、重要な管理のポイント(重要管理点)とします。
十分に加熱ができる肉の大きさや加熱温度・加熱時間を決定し、実行することで確実に肉の中心まで加熱できれば、細菌が付いていたとしても死滅させることができます。更に温度や時間を記録し保管することで後からでも検証できるようにします。
農場HACCPは、こうした食品製造工程でのHACCPの考え方を、肉用の家畜を育てたり、卵や牛乳などの畜産物を生産する工程に取り入れるために、農林水産省が策定したシステムであり、農場で生産される畜産物の安全性を確保します。閉ざされた空間である食品工場のように厳密にはいきませんが、すべての工程や作業でしっかり管理していく、という考え方は同じです。
食品である畜産物を生産する農場では、安全な農産物を生産するため様々な管理に取り組んでいます。その中でも、農場HACCPの考え方に基づき、飼料、飲水などの資材から、家畜を飼う環境、生産した畜産物の取扱いなど、農場でのすべての工程において、安全性確保のための管理を実践している農場は、認証機関(第三者)による客観的な審査によって認証を受けることができます。
認証を受けるためには、審査員による文書審査や現地審査を受け、その審査報告書をもとに認証機関の判定委員会が行う審議で適切と判断されなければなりません。
また、重要なのは、一度認証されれば終わりではなく、農場自らも取組の計画、運用、検証、改善を継続して行い、よりよい取組としていくとともに、3年間の有効期限の間に運用状況を確認するための維持審査や、継続するための更新審査を受け、継続してしっかりとした管理が行われることが求められます。
認証制度についてはこちらをご覧ください。
認証制度が始まった平成24年度には18農場であった認証農場は、令和3年には400農場を超えるまでに増加しました。飼養する家畜の種類は、乳用牛、肉用牛、豚、採卵鶏、肉用鶏と多様であり、安全な畜産物の生産に取組んでいます。
認証農場は、農場の看板やホームページなどに農場HACCP認証マークを表示することができます。
また、平成30年7月から、農場HACCPに取り組んで生産された畜産物であることを示す認証マークを畜産物にも貼付できるようになり、小売店等で認証農場の畜産物であることがわかるようになりました。令和3年末で30農場が生産した畜産物に認証マークを貼付しています。
認証マークを畜産物に貼付している認証農場の情報をこちらにまとめたのでご覧ください。
お問合せ:公益社団法人 中央畜産会衛生指導部(農場HACCP認証協議会事務局)
担 当:中山
TEL:03-6206-0832
FAX:03-3256-9311